今年6月からパワハラの防止措置が企業に義務付けられます。中小企業は2022年6月からとなります。「パワハラ防止法」と呼ばれることが多いですが、「改正労働施策総合推進法」が正式な名称です。
何が必要か?
事業主に義務付けられるのは「雇用管理上、必要な措置を講じること」。具体的には以下のような内容です。
1.事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発
2.相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
3.職場におけるパワーハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応
4.1~3までの措置と合わせて、相談者・行為者等のプライバシーを保護すること、その旨を労働者に対して周知すること、パワハラの相談を理由とする不利益取扱いの禁止
つまり、パワハラに対する社内方針を明確にした上で周知・啓発を行うこと、相談体制の整備、被害を受けた労働者へのケアや再発防止について適切な措置を取ること、と言った内容です。
パワハラ防止法に違反した際の罰則は設けられていないのですが、場合によっては「勧告」「指導」の対象となってしまうこともあるので注意が必要です。
最近の動向
全国の労働局に寄せられたパワハラの相談数も増えています。2017年は72,000件でしたが、2018年には83,000件に増えました。そんな状況で遅ればせながら予防・対応対策が義務づけられる、ということです。
パワハラ関連の裁判も増えてきていて、企業や加害者が慰謝料を請求される判例もあります。高額なものだと2017年に名古屋高裁で、企業と加害者に5500万円の支払いが命じられたケースもあります。
金銭面だけではなく、こういったハラスメント行為がSNSなどで世間に広まってしまうと企業イメージもダメージを受けます。
2018年に起こった日大アメフト部の悪質タックル、それがきっかけとなり日大の経営体質にまで波及しました。翌2019年には日大の志願者数のランキングでは5位から9位に転落。
大学でもこれだけの影響があるのです。
企業となれば社会に与える影響はより大きくなります。顧客やパートナー、上場しているなら株主もそうだし、なによりそこに勤めている従業員。
パワハラやハラスメントを放置すると、それは経営リスクになる、ということ。だから放置してはいけないのです。
ハラスメントを放置するのは経営リスク
私自身、ハラスメント防止研修をいろいろな企業で行っています。人事部の方からよく聞くのが、
「自分自身、若いころこういう風に指導されてきた」
「自分の行為は限りなくハラスメントに近いと分かっているけど、これについてこられない部下は必要ない」
など、自分の行為を正当化する上司も多いです。
でもそれを認めてはいけません。
かつては許されていたかもしれませんが、時代は変わったのです。厳しい指導がいけないとは言いませんが、上司の役割は部下を育成し、成果を出せるような環境づくりです。
たとえ最終的には「パワハラ」と認定されなかったとしても、部下がのびのびと働けるようなチーム作りをしているとは思えません。
問題行為を見つけたら、事が大きくなる前に対応していくことが必要です。そのためにも、相談窓口を設置し、誰でも気軽に相談できるような環境が大切です。
従業員が直接労働局などに相談に行くことも可能ですが、そうなる前に社内で対応したいですね。
ハラスメントを放置せず、小さな芽のうちに摘み取っていく取組みが必要です。