4月から中小企業にも残業時間の上限規制が始まります。1月にも別の記事で上限規制について触れましたが、今回は残業が発生するメカニズムについて解説します。
今日ご紹介する内容は立教大学の中原淳教授が3月20日付けの日経新聞に寄稿された記事と、同じく中原教授の著作「残業学」から抜粋しています。
残業が発生するメカニズム
中原淳研究室とパーソル総合研究所が2万人規模の調査を行い、データを分析しました。その結果、残業発生のメカニズムは「集中・感染・麻痺・遺伝」という4つのキーワードで説明できるそうです。
「集中」は一部の特定の優秀な人材に業務が集中してしまいがち、ということ。
「感染」は職場でまだ働いている人がいると帰りにくいという雰囲気。これはよくあるのではないでしょうか。特に若い世代ほどこの傾向が強く、先輩や上司より先に帰りにくいと感じているようです。
3つめは「麻痺」。月60時間未満までは、残業時間が増えるほど主観的幸福度が減っていきますが、月60時間を超えると、逆に幸福感が増えることがわかりました。摩訶不思議な現象ですが、周りから頼られていると感じるようになることが原因のようです。
感情的には幸福かもしれませんが、心身のリスクは高まっています。本人がやりたいからと言って任せてしまうのは危険です。
最後に「遺伝」。上司の過去の残業経験がそのまま部下に影響します。上司が若手だった頃の経験が、上司の立場になっても部下に残業させやすい傾向があります。
どうやって減らすか?
こういったメカニズムを把握した上で、どのように減らしていくか?必要なのは
・現状把握(何をするために、どれくらい残業しているのかを把握する)
・本気度を示して、最後までやり切る
・効果を実感する(特に最初の数カ月はどれくらい減っているかグラフなど使って可視化する)
・減った分の残業代を還元する
減った分の残業代を還元している企業は幾つかあります。残業代が生活費の一部となっている現状を考えると、減らすことへのインセンティブが働きません。ですので、減った残業代の全額ではなくても一部を「手当」として毎月の給与や賞与で支給している企業もあります。
ある調査では、去年4月から適用されている主要企業110社のうち45%(49社)が、前年に比べ残業時間が変わらなかったり増えたりしたことが分かっています。
もしあなたの組織で思うように残業がまだ減っていないようであれば、ぜひこのメカニズムや減らすための手法を試してみてください。
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